2014年 11月 13日 ( 1 )


 かねてから行きたかった、正藍型染師 田中昭夫さんの展示を見てきました。
 (田中さんについて詳しくはこちらのブログを色々とご参照ください。僕もこのブログで知りました。)

 僕は藍染めには(というか染めには)まったく詳しくありません。
 それでも、田中さんがどれほどの仕事をして今に至るのか。
 展示を見たら、想像する事は難しくありません。
 こんな人が、今の世にまだいたのか。
 言葉では言い表せないくらいの感情がわいてきました。
 藍をたて、染めの型紙を自ら彫り、染める布は手紡ぎ手織りのものを国内外から集め、染めに関する全てを自ら手作業で行ってきた田中さん。
 作品はもとより、作業場を見せていただいたときはどうにも泣けてきてしまってしょうがありませんでした。
 古びた民家の一角で、世間からは見向きもされず、正当な評価も得られないまま、それでも自分の想う染めを、実直にされてきたのだと感じました。
 それこそ、馬鹿正直に、一筋に貫いてきたのだと。
 この場所で、この人は、自分と、染めと向き合いながら50年以上生きてきたのか。
 素晴らしい手仕事を目の前にして、僕はただお礼を言う事しかできませんでした。
 がんばってくださいなんて、口が裂けても言えない。
 どんな言葉も、まったく意味を持たない様な気がしました。
 それこそ、ありがとうございます、という言葉だって。

 田中さんからしたら、自分の想う事をしてきただけなのかもしれません。
 それでも僕は、田中さんに感謝しました。
 哀愁漂うその姿からは「職人」の威厳のようなものは感じられませんでしたが、それでいいのだと想いました。
 言葉の節々からにじみ出る、創り手の年月の存在だけでもう、充分説得力がありました。
 写真を撮るより、ちゃんと真っ正面で田中さんの言葉を受け止めたい。
 どんな表情で、どんな言葉を使って、ご自分の仕事を語るのか。
 一言も聞き逃してはいけない。
 そんな気持ちでいました。

 川口のアートギャラリーアトリアでは、作品と共に作業風景の映像も見る事が出来ます。
 会期は16日(日)までですが、興味とお時間がある方はぜひ、お運びください。
 まだ、完全に火が消えた訳ではありません。
 モノと人が存在する限り、必ずそこには温度があります。
 それを直接感じるだけで、充分意義のある展示会だと思います。

 詳しくは「けろ企画」さんのブログでもろもろご確認ください。

 今日もまた、背筋が伸びる一日であったことに感謝します。
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by pops-fabric | 2014-11-13 23:25 | 色々紹介