再会

 今週木曜から昨日まで、工房では「手織技術検定」の試験、講習会が行われていました。

 そこには全国各地でさをり織りを伝えている指導者の方が、講師として集まっておられました。

 受講者の方々も全国からたくさんいらしていたようです。

 お昼休みなど、工房のなかはさをりの服を着た人たちでごったがえし、それはそれは楽しい時間でした。

 そんな賑やかな時間も過ぎ、講習会も終わり、一息つきながら片づけをしていた時です。

 僕の前におもむろに現れ、深々と頭を下げ、

 「あの時はありがとうございました。」

 と言う、僕の母親くらいの女性がいます。

 誰かと思うと、それは石巻で工房を営まれているOさんでした。

 

 時間は遡り、3月8日(火)か9日(水)。

 震災があったのが3月11日(金)なので、その二、三日前に僕はOさんに出逢っていたのです。

 工房には日々色んな方が訪れるのですが、彼女もそんな中の一人でした。

 さをり織りをされている方は全国にいます。

 それこそ海外にもたくさんいます。

 それでも、さをり織りという存在はまだまだメジャーではありません。

 だからこそ、さをり織りを通して出逢った方には何か特別な連帯感の様なものを持ったりします。

 そうして、石巻にもさをりを伝えるOさんがいる。

 という事実を、僕は肌で感じたのです。



 そんな矢先の震災。


 
 二、三日前に会ったばかりの人が震災に遭った。

 Oさんが無事だという連絡はすぐに入ってきました。

 TVやラジオから被害の状況など色んなニュースも入ってきました。

 しかし、Oさんがどんな体験をしたのかは分かりません。


 ゴールデンウィークに工房の主宰が現地の状況を見に、Oさんを訪ねていきました。

 そこで見たこと、聞いたこと、感じたこと。

 工房に戻ってきてから色々話してくれました。

 
 その時、石巻の工房は営業中。

 地震は起こり、津波が押し寄せ、高台に逃げることもままならず、
 その時織りに来ていたメンバーさんと首まで水につかりながらも工房内の水の来ないところに避難し、夜を明かしたそうです。
 
 迫りくる水の恐怖。

 外の状況も何も分からない不安。

 すさまじい体験をしたんだと思います。

 それでも、助かったOさんたちはよく笑っていたそうです。

 

 想像は想像を超えない。

  
 被災されたOさんの話を聞いてはいたけど、やっぱりどこか他人事だったんだと思います。

 昨日、Oさんに会って、すべてがリアルになりました。

 Oさんにお礼を言われ、僕は返す言葉もなく、溢れ出そうになる涙を抑えるのに必死でした。

 僕がしたことと言えば、現地に向かう主宰にわずかながらの義援金を託しただけです。
 
 気の効いた一筆すらありません。

 それなのに、Oさんは深々と頭を下げ、ありがとうと言ってくれるのです。

 僕は、ただただ、一緒になって頭を下げるばかりでした。

 そして、Oさんが「生きている」という事実を目の前にし、人間の存在の強さを感じました。



 

 震災のことについてはここではまったく触れてきませんでした。

 僕みたいな人間が、たいそうに不特定多数の方の目につく場所(ネット)で、こんな大きな出来ごとについてもの申すなんて、出来やしないと思っていたからです。
 
 しかも得た情報は、「僕」のものやそれではなく、マスから流れ出るものだったり、人づてに聞いたもの。
 
 僕の中のリアルはどこにもありませんでした。

 しかし、それも昨日で変わりました。

 震災を体験された方とのたった一言二言の会話で、すべてがリアルになりました。

 もっともっと、知らなきゃいけないことがある。

 感じなきゃいけないことがある。

 
 僕はもう一歩、踏み込んで考えられるようになりました。






 いつもながらつたない文章、長々と読んでいただけて、嬉しく思っています。
 まとまりも何もない、「ちょっとおおきなひとりごと」。
 これを読んで不快な気持ちになる方がいないことを願うのみです。
 駆け足で過ぎていく毎日の中で、それでも、なにかを感じることは忘れないようにしながら、
 日々の営みを重ねようと思います。



  

  
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by pops-fabric | 2011-11-06 08:47 | 日常のこと